香りを生み出す技術:天然香料の世界

香りを生み出す技術:天然香料の世界


香りの世界には、古代から受け継がれてきた天然香料が欠かせません。植物や花、時には樹脂などから丁寧に抽出されるその香りは、人工香料では再現できない深みと温かみを持っています。そんな天然香料がどのように作られるのかをご紹介しましょう。


1. 水蒸気蒸留法:香りのエッセンスを引き出す

ラベンダーやローズなど、多くの植物は「水蒸気蒸留法」によって精油(エッセンシャルオイル)へと生まれ変わります。植物を加熱し、蒸気とともに香り成分を抽出し、冷却して油分として回収するこの方法は、香りを損なうことなく取り出せるため、香料業界では最も広く使われています。

2. 溶剤抽出法:繊細な花々のために

ジャスミンやチュベローズなど、熱に弱く繊細な花々には「溶剤抽出法」が適しています。花を溶剤に浸し、香り成分を溶かし出した後、溶剤を除去して「アブソリュート」と呼ばれる濃厚な香料に仕上げます。この方法で得られる香りは、まるで花がそのまま存在しているかのような濃密さと複雑さを持っています。

3. 圧搾法:柑橘系の香りをそのままに

オレンジやレモンなどの柑橘系の香りは、果皮を「圧搾」することで抽出されます。この方法は非常にシンプルですが、フレッシュでみずみずしい香りをそのまま取り出すことができるのが特徴です。果物を切った瞬間に立ち上る爽やかな香り——それをそのまま閉じ込めたような香料が生まれます。

4. 浸漬法:古代からの手仕事

古代エジプトなどで用いられていた「浸漬法」は、香りのエッセンスをじっくりと油に移す手法です。花や樹脂を油脂に漬け込み、香りを吸収させるという時間をかけた方法ですが、その分、柔らかく奥行きのある香りが得られます。現代ではあまり一般的ではありませんが、希少な香料として特別な用途で用いられています。

5. 超臨界二酸化炭素抽出法:現代技術の結晶

最新の技術である「超臨界二酸化炭素抽出法」では、低温・高圧の二酸化炭素を用いて、純度の高い香り成分を取り出します。これにより、植物が持つ繊細な香りを壊さずに、そのまま閉じ込めることが可能になりました。高品質な香料を求める現代の香水業界では、この技術が積極的に取り入れられています。


香りを作るということ

天然香料は、植物の特性や香りの特徴を見極めながら、最適な方法で丁寧に作られます。一本の香水の中には、自然の恵みと職人の技が織りなす繊細なバランスが詰まっています。

香水の一滴に込められた歴史と技術、その奥深さを感じながら、香りの世界に思いを馳せてみるのも、またひとつの楽しみ方かもしれません。

 

EAGG producer
中原 綾乃 / NAKAHARA  AYANO
1995 . 5. 20 生まれ

環境デザイン学科プロダクトデザインコースを卒業後、
人材系WEBメディアに就職。
その後、香りのWEBメディアSCENTPEDIAのライターとして活動。
2020年秋、フレグランスブランド「eagg」を始動。
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